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オルガニート作曲・編曲講座

編曲コース STEP5

♪和音1・コードネームの話♪

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 これまでは編曲する上で、使えない音を他の音で代用するときは、近くで使われている音を 使うといい、という説明をしてきました。今回は、代用する音を探すために、 簡単な和音の知識と編曲での和音の利用法を説明します。
 ここでは20弁のオルガニート用の編曲を対象にしていますので、 ハ長調によく出てくる和音に限ってついてお話します。 そして今回は、コードネームのお話を中心にします。

♪1.コードネームとは

 市販の楽譜には下の楽譜例(「聖夜(きよしこの夜)」の最初の部分) のように五線譜のすぐ上にアルファベットがところどころ書いてあるものが あります。これがコードネームです。
コードネームの楽譜例

 コードは和音、ネームは名前、つまり「和音の名前」のことです。 アルファベットは主に大文字のAからGまで出てきます。 他にMやm、♯や♭、数字の7もよく出てきます。

♪2.ハ長調に出てくる和音とコードネームの読み方

各国語の音名

 これはハ長調の音階と各国語での音の名前です。 この音階をもとに3つの音で構成される和音を作ってみましょう。 それぞれの音の上に音符が重ならないようにしかも離れないように、 2つの音を付け加えて和音にします。

ハ長調の3和音

 これがハ長調で出てくる主な和音です。和音の下に書いてあるアルファベットがコードネームです。 コードネームは、3つの音で構成される和音の一番低い音(これを「根音(こんおん)」と呼びます) の英語の音名ということになります。 Gの和音例 読み方はアルファベットの英語読みそのままです。 C(シー)は「ドミソ」の和音、G(ジー)は「ソシレ」の和音です。 また、例えばG(ジー)「ソシレ」の和音は、「シレソ」でも「レソシ」でも 右の例のように音の間があいていても、構成している音が「ソ」と「レ」と「シ」ならばすべてGになります。

 ところで、和音には明るい響きの和音と暗い響きの和音があります。詳しい説明はここではしませんが、暗い和音のときは m(minerの意味)を右下に沿えることになっています。 Dmの場合は「ディーマイナー」と読みます。
Gの和音例  他にハ長調によく出てくる大切な和音にG(ジーセブン)があります。「ソシレファ」の 和音のことです。「ソ」から数えて「ファ」は7つ上の音なので、「ソシレ」に7つ上の音「ファ」を 足した和音という意味です。「ソシレ」の和音の代用として使うことがあります。
 Bの和音はGから「ソ」が省略されているみなすことにします。 実際にほとんど使われません。

♪3.ハ長調にときどき出てくる和音

 下の5線譜には、ハ長調の和音ではないのですが、ハ長調の曲にときどき出てくる 和音のコードネームと構成音をまとめました。
ハ長調の曲にときどき出てくる和音

 このように、♯や♭が付いています。オルガニートは♯や♭の付いた音は出せないので、 編曲するときはこれらの音は省略することが多いです。

♪4.コードネームの応用表記

 基本のコードネームの話は終わりました。やや応用編です。
最低音を書く場合  左の例のように「C/E」や「FonG」と書かれている場合があります。これは、左側の「C」や 「F」がコードを表し、右側の「E」や「G」は和音の最低音(「ベース音」とも呼びます) を表しています。
 ベース音は根音にするのが基本ですが、曲の中での音の流れや意表をついたりするとき、 ベース音に根音意外の音を使うことがよくあります。このとき、コードネームに沿えてベース音も 書く場合があります。「C/E」は和音は「ドミソ」で、ベース音に「ミ」を使うという意味、 「F/G」は「ファラド」の和音ですが、和音以外の「ソ」をベース音に使うという意味です。 「/」も「on」も意味は同じです。

♪5.コードネームの適用範囲

 コードネームは楽譜のところどころにしか書いてありません。楽譜の最初の小節には 必ず書いてありますが、その他の小節には全く書いていなかったり、1小節の中に2つ以上 書いてある場合もあります。それぞれのコードが適用される範囲は、そのコードネームの 書いてある場所から、次のコードネームの書いてある直前までです。

♪6.コードネームの移調

 ハ長調でない楽譜は、オルガニート用に編曲するにはまずハ長調に移調する作業があります。 そのとき、コードネームも移調しなければなりません。難しいことはありません。 楽譜の音符を移調するのと同じです。
 コードネームのアルファベットは和音の最低音(根音)を英語表記していることは前に 説明しました。コードネームの根音を音符と思って移調すればいいのです。
 このページの最初にある楽譜例は、「聖夜(きよしこの夜)」の移調前のメロディ譜の冒頭です。 この楽譜は♭が2つなので変ロ長調です。 ([ハ長調への移調の方法] 参照)「シ♭」が主音なので、 すべての音とコードネームは上に音2つ分移動させればいいのです。この「2つ」とは 始りの音と終わりの音の両方を含めてください。
 楽譜例の最初の音は「ファ」なので、2つ上にずらすと「ソ」です。コードネームは「B♭」 つまり「シ♭」です。♭のことは無視して、2つ上にずらすと「ド」、コードネームに直すと 「C」になります。

♪7.コードネームの使い方

 では、実際に編曲をしながらコードネームをどのように利用したらいいのかをご説明します。 今回の曲は賛美歌の「聖夜(きよしこの夜)」です。
 まずは原曲譜です。小節の左上に付いているアルファベットがコードネームです。
 この曲は結構ゆっくりな曲ですが、今回は4分音符単位の編曲にします。 いつものように、緑の音符はオルガニートにはない音、青の音符は同音が近い音です。
「聖夜」原曲譜

 ここで、曲と楽譜の解説を少々。
 この曲は8分の6拍子です。 8分の6拍子とは、1小節の中に8分音符が6個入っている拍子のことです。 1拍目が1番強くて次に4拍目が強い、1小節に小さい3拍子が2つ入っているような拍子です。 この拍子感を出すように編曲することにします。
 3段目の2小節目の「ド」についている「スラー」は、「スラー」ではなくて「タイ」です。 タイは必ず2つの同じ音にかかています。2つの同じ音をつなげて演奏するという意味なので、 タイのかかっている後ろの音は、オルゴールでは基本的に鳴らしません。

 では、編曲譜です。赤○印は省略した音、グレーの音符は追加した音です。
「聖夜」編曲譜

  • 1小節目と2小節目。メロディの音はなるべく省略したくないので、3拍目と4拍目で「ミ」が続くところは、 4拍目を優先し3拍目は省略ます。
    最低音の「ド」は、4拍目のほうを強くしたいので3拍目を省略することにします。
    かわりに1オクターブ上の「ド」は3拍目を採用します。
    3拍目が2音になってしまいました。このままでもいいのですが、1音補うことにします。 1小節目の和音は「C」です。「ド・ミ・ソ」の中のいずれかの音を補います。 メロディより低い音で使えるのは低い「ミ」のみなので、「ミ」を採用することにします。
  • 3小節目も、1,2小節目と同じように4拍目を3拍目より強くしたいので、4拍目の音を すべて採用して、3拍目の「ファ」と「ソ」を省略します。
    3拍目が2音になってしまったので、1音補うことにします。この小節の和音は「G7」です。 「ソ・シ・レ・ファ」の中から、メロディより低くて、4拍目の最低音の「ソ」より高い音を選びます。「レ」か「ソ」が あります。3拍目の「レ」と「シ」の中間になるべく近い音にするとバランスがよさそうなので、 「ソ」にすることにします。
  • 4小節目は、3拍目と4拍目と1音ずつ省略しました。
  • 5小節目、3,4拍目にある「ラ」はメロディを優先するので、4拍目を省略します。 また、最低音は強い拍に置きたいので「ファ」は4拍目に置いて3拍目は省略。
    4拍目は、上の「ド」から下の「ラ」までかなり間があいてしまうので、間に音を補う ことにします。この小節の和音は「F」なので「ファ・ラ・ド」の中から探すと、 「ファ」がありました。
    5拍目の後半の「ソ」は6小節目の「ソ」と近いので省略します。また、 ここは16分音符でとても短い音なので、弱目にしたほうがリズム感が出ます。2音しか ありませんが、このまま他の音を付け加えないことにします。
    6拍目は音が4つありますが、強すぎるかもしれないので1音省きましょう。 バランスを考えて上の「ファ」を省略することにします。
  • 6小節目は1,2小節目と同じ。
  • 7,8小節目は原曲では5,6小節目とほとんど同じなのですが、全く同じことを繰り返す のもつまらないので、少し弱い感じにしてみましょう。これは、よくやる手なのです。 同じフレーズが2回続く場合、最初はフォルテで2回目はピアノでというふうに、エコーがかかった ようにして変化を持たせるのです。弱い感じにするには、音数を減らしたり、 音域を狭めたりする方法があります。ここでは、低音側の音を減らしてみましょう。
    1拍目は最低音の「ファ」を消すと2音になります。このままでもいいのですが、やはり1拍目は 多少強めにしたいので、1音補います。この小節の和音は「F」です。「ファ・ラ・ド」の中から メロディより低いけれどなるべく高い音を探して「ファ」を付け加えることにします。
    3拍目は最低音「ファ」を消して3音残ります。1拍目より弱くしたいので1音削ります。 真中の「ファ」を削ることにします。
    4拍目は「ラ」が使えないので省略します。
    5拍目の後半の「ソ」は8小節目の「ソ」と近いので省略。残ったのが上の「シ」と下の「シ」、 「シ」が重なると強調されやすいので、下の「シ」も省いてしまいましょう。
    6拍目は、「ド」を次の小節に譲ります。
  • 8小節目は、3拍目の「ミ」は4拍目に譲るので省略、変わりに「ド」は3拍目を優先して、 4拍目を省略。
    2拍目の後半は、短い音なので1音にします。
  • 9小節目、3拍目の「ソ」は4拍目に譲って、変わりに「ファ」は4拍目を省略。
    4拍目の上の「ファ」と下の「レ」まで間があきすぎるので、1音補います。 この小節の和音は「G7」です。「ソ・シ・レ・ファ」の中からちょうどいい高さの音を 選ぶと「シ」になります。
    6拍目は4音あると強いかもしれないので、1音省きます。中の2つの音のどちらかを省きます。 どちらでもいいのですが、「レ」を省くことにします。
  • 10小節目は、そのままでもいいのですがこの曲の中で最も印象的な部分なので、4拍目に アルペジオを使うことにします。少ない音でのアルペジオはあまり効果がないので、 音を足します。この小節の和音は「C」なので、「ド・ミ・ソ」の中から適当に 付け加えます。メロディの音の高さが1拍目から4拍目に向って上昇しているので、 最低音も上昇させます。 最低音はメロディよりもっと上昇させたほうが、上昇している感じが強調されるので、 最低音を「ソ」にしました。その上の「ド・ミ・ソ」の音を全部使ってしまいましょう。
  • 11小節目、3拍目の「ソ」は4拍目に譲ります。
    4,6拍目の低い「ソ」は省略。
  • 12小節目は最後なのでアルペジオにしましょう。 この小節の和音は「C」なので、「ド・ミ・ソ」の中でメロディより低い音で使える音は すべて使ってしまいましょう。

♪8.カード作り

 この曲は8分の6拍子です。小節線は3拍子と同じように縦実線3本おきに書きます。 カードに印をつけると下のようになります。
「聖夜」カード印し付け例

 演奏するとこんな感じになります。[聖夜試聴]

まとめです。

  • コードネームは和音の根音を英語表記したものです。
  • コードネームを見れば、その和音の構成音がわかります。
  • 原曲にはない音を補うときは、その部分の和音の構成音の中から選びましょう。
  • メロディの音はなるべく省略しないようにしましょう。
  • リズム感や拍子感を出すためには、強拍と弱拍の差を音の数で付けます。
  • 低い音は強拍に使うようにしましょう。
  • 強拍でないところで使われる短い音は、強くなるとリズム感がでにくく野暮ったい感じになります。


 次は[STEP6.和音2・自分で和音を調べよう]です。